子どもを信じることは本当に難しいものです。親は,これまでの経験から,こんなことをしていると友達から嫌われるとか,嫌な思いをするのではないかとか,仕事ができないのではないかとか,とかく心配なものです。正しいことを教えるのが躾と思っているので,子どもが正しくないことをしたらやたら叱ったり,話して聞かせたりします。そんな時,自分の過去のつらさがフラッシュバックして余計に不安になり,親自身も傷ついていることが多いです。
不登校の相談を受けているとこういった場面によく出会います。子どもの不登校という現象から自分の育て方を振り返るときに,自分の生い立ちや経験を思い出し,そのつらさを追体験していくのです。子どもが不登校になったら,まずお母さんは,自分の育て方に自信がなくなり,自分が変わったら子どもも変わると信じて,自分の過去を掘り起こし,反省していきます。そして不登校を自分の出来事のように受け止め,さまざまな努力をします。でも結果はうまくいかないのでさらに傷ついてしまいます。ここで大切なことは,今起きている不登校とお母さんの出来事と切り離して考えることです。学校に行かないと選んだのは子どもです。だから不登校は子どもの課題なんです。それを理解して支援することはとても大切なのですが,お母さんの課題ではありません。学校へ行くか行かないかの結果をお母さんの課題にしてしまうことで,親も子も追い込まれていってしまうのです。不登校で一番身近な親の支援が必要なのに,親が一番理解していない環境をつくってしまいます。
子どもは何が正しいかをきちんと知っています。決して学校に行かないことが正しいと思っているわけではありません。ただ自分の心と身体を守るために,学校へ行かないという選択をしているのです。それを理解するだけで,子どもは生き生きとしてきます。これが子どもを信じることだと思います。まず,子どももつらいことを理解し,子どもも決して学校に行かないことを正しいと思っているのではないことを知ってあげることが大切なのです。